連載

RPべるぎーの胸の内:障害者と恋愛(3)

前回は、私が「障害者と恋愛」と聞いて思い出すテレビドラマ、『大恋愛〜僕を忘れる君と』(だいれんあい ぼくをわすれるきみと、以下『大恋愛』)を観て私が感じたことや考えたことについて書かせていただきました。今回も引き続き、『大恋愛』を観て私が感じたことや考えたことについて書かせていただきます。なお、以下の内容は『大恋愛』のネタバレを含みますので、ご注意ください。

この記事は2020年2月27日掲載の「RPべるぎーの胸の内:障害者と恋愛(2)」のつづきです。まだお読みになっていない方は、上記の(2)から先にご覧ください。

突然の別れ

真司さんに病のことをカミングアウトし、『俺には親も金も学歴も資格も将来もない。だから、尚が何の病気でも構わない。尚と一緒にいたいんだ』と真司さんの思いを告げられた尚さんでしたが、のちに尚さんは真司さんから別れを告げられることになります。その別れを告げるシーンは、尚さんが病をカミングアウトしたときのシーンとのギャップがあまりにも大きすぎました。私はそのギャップに衝撃を受けたとともに「(別れるのは)病気のせいなのかな」というショックで、観ていて涙が出たほどです。

別れを告げるシーンを観たときは、真司さんが尚さんに別れを切り出したのは尚さんの病のせいだと思っていました。しかし、今では違います。尚さんの元婚約者に対する真司さん自身のコンプレックス(親がいない孤児院育ち、2作目の小説は酷評されて散々、アルバイトで生計を立てている、お金がない、体力も衰えた)からくる不安に押しつぶされそうになり、その不安に真司さん自身が耐えられなくなったから別れを告げたのだと考えています。尚さんが、別れを告げてきた真司さんに対する思いを『優しくて面白ければ、それだけで良いのに』と語るシーンがありましたが、真司さんにとっては「優しくて面白いだけ」の自分に不安になったのでしょう。

先ほど、真司さんが尚さんに別れを告げたシーンを観ていて涙が出たと書きましたが、結婚の話を白紙に戻された私の実体験と重なったことも、泣いてしまった要因の1つです。

実は、私にも結婚の話を白紙に戻された経験があります。私の彼が別れを告げた理由は前述の真司さんの理由と違ったかもしれませんが、病気のことを知った上で付き合ったはずなのに「支えていく自信、幸せにする自信がない」と、尚さんも私も言われてしまったのです。どんな彼であれ私が好きなのは彼だけなのに、その気持ちを受け取ってもらえずに離れていく、離れようとする彼。その状況が尚さんと重なりすぎて、その話の放送回は観ていて特に辛かった記憶があります。

真司さんの覚悟

2月12日掲載の「障害者と恋愛(1)」で『障害者とお付き合いするには、それがどんな障害であろうと覚悟を求められるのではないかなと思います』と私の考えを書かせていただきましたが、やはり『俺には親も金も学歴も資格も将来もない。だから、尚が何の病気でも構わない。尚と一緒にいたいんだ』という真司さんの言葉は、何かしらの覚悟を決めた人にしか言えないことだと思います。いえ、思っていました。この記事を書くまでは。

もしかしたら、真司さんは覚悟なんかしていなかったのかもしれないと、今は思います。真司さんは言葉通り「(ただ)一緒にいたい」という気持ちだけだったのかもしれません。もし真司さんの気持ちがそうだったとして、私が尚さんの立場なら喜んでいただろうと思います。将来は何が起こるか分かりません。相手が自分よりも重度の障害者になることだってありえます。だからこそ、変な覚悟を抜きにして将来を考えてくれることが、どれだけ嬉しいことか。

しかし、現実的には「ただ一緒にいたい」という気持ちだけでは結婚はできないのでしょう。私の彼もそう考える人でした。でも、その気持ちだけで十分なのではないかと思いたい自分がいます。何か問題が起きたとしても、一緒にいたいから協力して解決していく。それではダメなのでしょうか。障害を持っていたとしても、一緒に前向きに将来を考えられる人と一緒になれたら幸せですね。

ライター:べるぎー