連載

なみの全盲ありのままライフ:ありのままの私でいられる理由

全盲で、好奇心は旺盛だけど超小心者で…。そんな、ちょっと生きづらい性質を持った私。生きづらいけど、長年楽しくやってきました。我ながらすごいなあと思います。

いったいどうして、こんな私が楽しくやれるのでしょうか。考えてみると、そのヒミツはやっぱり両親の存在にあるような気がするんです。ということで今回は、そのあたりについて書いてみようと思います。

心配の尽きない子

2,830グラムで生まれた私。元気な女の子でしたが、みんなを戸惑わせました。その目は光をキャッチしていなかったのです。それでも、私は結構幸福な赤ちゃんライフを送っていました。

どんな子だったか。一言で言えば、「かなり食い意地の張った女の子」でした(そこは今も変わっていません)。当時の私ときたら、ミルクをたっぷり飲んで丸々と太っていたんですよね。(その頃の写真が障害者手帳にばっちり貼られてしまい、みんなに苦笑いされていたのは懐かしい思い出です)

で、私はたぶんミルクのことばかり考えてのほほーんとしていたのでしょうが、両親は私の目のことを知って相当心配していたようです。父はトイレでこっそり泣いていたのだとか。

そうとは知らずにスクスク育った私は、幼稚園に通い始め、驚異の好奇心を発揮するようになりました。ありとあらゆるものに興味を持ち、触りたがる。何でもやりたがる。誰にでも積極的に話しかける。ちょっと危なっかしいところのある子どもだったんですね。
両親は気が気じゃなかったことでしょう。好奇心をどうにか満たしながらも危険なことはさせないようにと、あれこれ考えてくれていたようです。

盲学校の小学部に入学したあたりからは、さらに気がかりな子になりました。どういうわけか、「好奇心旺盛な超小心者」に変身してしまったんです。「あの子が喋ってるの見たことない」「喋れないんじゃないの?」と噂になるくらい喋らなくなって。それなのに、「親しい友達といろんなところに遊びに行きたい、初めての場所に行ってアドベンチャーを敢行したい」みたいな思いを持っていて。困った子でした。

アドベンチャー計画を話してみたとき、両親は心配しました。「何かあったらどうするの」と。とりわけ母は後ろ向きでした。私はそれを聞いて、「心配症すぎて嫌になる」とぼやいていたんですよね。そんなことが何度かありました。初めての場所で道がわからなくなったりして、誰かに声をかけることができるのか。小心者がアドベンチャーだなんてどうかしてるんじゃないのか。誰だってそう考えるはずですが、当時の私にはそれが理解できず、モヤモヤする日々でした。まあ結局はある程度大きくなるまでアドベンチャーは我慢したのですが。

それでもやりたいようにさせてくれた

こんな感じで心配ばかりかける子どもだったのですが、両親は基本的に、やりたいようにさせてくれていました。後ろ向きな反応を示すことはあっても、否定するようなことはなかったんです。「勉強しなさい」などとガミガミ言われた記憶もほとんどありません。

それをいいことに、大学生になってからの私はやりたい放題。好奇心のままに動き回ったんです。ネット上で知り合った人に会いに行ったり、学生団体のイベントに参加したり。
小心者であるという重要な事実も忘れて、初めての場所でもお構いなしで。両親はそれを見て、安心してくれたのか「言っても無駄だ」とあきらめたのか、心配する様子など全く見せなくなりました。

あるとき、私が何気なく机の上に置いていたパンフレットを見て、母が聞きました。「留学に興味があるの?」と。そう、それは大学でもらった留学に関する案内だったんです。私は留学を考えていたわけではなかったので否定しようとしたのですが、母は何のためらいもなく続けました。「行きたいんなら行けばいいよ」と。一瞬、耳を疑いました。心配性だと思っていた母がそんなことを…。

確かに、海外で勉強するって興味深いことではあります。やってみたい気はします。
でも、小心者の私からすると結構ハードル高いんですよね。それでも母は、私は留学できると信じてくれた。私以上に。言葉を失うほどの感激でした。

両親に、そしてみんなに感謝

全盲なのに、声でのやり取りに苦労する小心者。どうしようもない私。だけど、いつも気持ちは安定しています。充実した日々を送ることができています。時には「全盲って面倒だな」とか文句を言いながらも、全盲を武器に、夢に向かって歩いているところです。

それは、どんな私でも受け入れてくれた、可能な限り自由な環境を作ってくれた両親のおかげ。ありのままの自分を活かして生きていこうと思えるようになったのも、この連載エッセイ「全盲ありのままライフ」で自分を素直に表現できたのも、2人の存在があったからです。改めて、感謝ですね。

そして私の連載にここまで付き合ってくださった皆様。
本当にありがとうございました!

ライター:なみ

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