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なみの全盲ありのままライフ:「いつもと違う」は大問題

一歩外に出たとき。そこには不思議な空間が広がっていました。よく知っているはずの場所なのに、いつもと全然違う。右に行くべきか左に行くべきか一瞬わからなくなり、歩き出すまでに時間がかかってしまいました。

何やってるんだろう、私。本当は何も変わっていないはずなのに。変わったのは私のほうで、ただ久々にマスクをして出かけようとしただけなのに……。

全盲の私にとって、「いつもと違う」というのはパニックの元。単独外出中などはちょっとした変化にも戸惑います。特にこの頃は新型コロナウイルスの流行により、生活環境は激変。「いつもと違う」だらけなんですよねー。今回はそんなお話です。

覆われると五感が…

私はいつも、視覚以外の感覚をフル活用して歩いています。音とかにおいとか、そういうものが大事な目印になるんですよね。その目印が見つけにくくなると、これは大問題。慣れている場所でも、工事などしていて様子がいつもと違ったらもう大変。思い切り迷子になったりします。

そんな私にとって最近特に衝撃的だった「いつもと違う」は、マスクの着用だったんです。

私、「覆われる」というのがどうも嫌なんですよね。帽子、マフラー、手袋。どれもあんまり好きではありません。で、マスクもあんまり使用したくないんです。そういうものを身につけたからといって大きな影響があるわけではないのですが、何となく落ち着かなくて。でもこの新型コロナ騒動の中、マスクをしないわけにはいかなくなったんですよね。気は進まないけど我慢するしかありません。

それで久々にマスクをつけてみたわけですが…
何でしょうね、大げさじゃなく別の世界に連れてかれたような感覚になったんですよー!いや本当に!五感が鈍っている感じなんですよね。ね、そう思いません?私だけ?

もちろんすべてが覆われるわけではありませんが、においは確実にわかりにくくなるじゃないですか。マスク1枚つけているだけで、どうしてこうも感覚が違うのでしょう。

まあこれからはマスク着用が当たり前になるかもしれないし、慣れなきゃですね。マスクを着用しているときは、今まで以上に慎重に歩かなければと思います。

ソーシャルディスタンスに悩まされる

コロナ騒動の影響で私たち視覚障害者が戸惑っていることはほかにもあります。例えばソーシャルディスタンス問題。人と人との間に十分な距離を取ることはもちろん大切です。でも私たちがそれを意識して外出するのは大変なんですよねー。

全盲の友人から、一人でスーパーに出かけて買い物するときすごく困るという話を聞きました。(私は外出しづらいとなればネットスーパーに頼りまくってしまうので、買い物で困ったことはないのですが)

店員さんに手引きをお願いしても、適切な対応をしてくれないというのです。肘を持たせてもらうといったことは拒まれ、後ろから押して誘導されるのだとか。誘導方法として一番あかんやつですよね。

商品を手に取って確認することもさせてもらえないのだといいます。形や大きさなど触ってみないとわからないのに。仕方ない部分もあるかもしれないけど、そういう対応はちょっと…ですよねー。

ほんの少しのサポートがありがたい

コロナ下に限らず、私たちはいろんなところで「いつもと違う」に遭遇します。

これを書いている今、外ではセミが元気に鳴いているのですが、このセミの大合唱でさえ私たちの「いつも」を乱す危険なものになります。周りの音を掻き消してしまうから。「セミさん、私が通るんだからちょっと静かにしててもらえないかなあ」と言いたいところです。まあセミさんだって一生懸命生きていて自分たちの役割を全うしているところなんだから文句は言えないけど。言ったところでどうなるわけでもないし。で、普段は問題なく歩けるような道でもうまく進めないんですよね。

そんなときにとてもありがたいのが、声をかけてくださる方の存在。私たちを困らせるのはほんの少しの変化です。ほんの少しサポートしていただけたら、それだけで非常に助かるんですよねー。私も何度となく助けていただいていますが、知らない人に声をかけるって簡単なことじゃないと思うんです。

それでも声をかけてくださる親切な方々。いつもありがとうございます。

ライター:なみ