連載

なみの全盲ありのままライフ:びしょ濡れ美術

盲学校。それは笑いの絶えない世界。私はそこで12年間過ごしました。人数の少ない学校ではありましたが、私にとってはすてきな仲間に出会えた場所です。

さて、前回はそんな盲学校の体育の授業について書きました。今回は私が好きだった授業、美術の思い出をお話しします。

盲学校の美術の授業

前回も書きましたが、入学したばかりの頃、私にはクラスメートがいませんでした。でも学年が上がって、私のクラスにも仲間が加わったんです。

元気いっぱいの男の子が二人。おしゃべり大好きで、クラスのリーダー的存在のA君。アイドル大好きでとても優しく、A君を慕っているB君。彼らのおかげで、教室の雰囲気は明るくなりました。私はびっくりするほど人見知りが激しかったもので、最初は戸惑うばかりだったのですが、この二人とはだんだんと仲良くなっていったんですよね。

3人で受けていた美術の授業は、私にとってとてもリラックスできる時間でした。好きな音楽をかけてもらいながら、おしゃべりなどしながら、楽しく作業することができたから。

石を削って勾玉を作ったり。お菓子に触りながら、そのお菓子の形を粘土で再現したり(懐かしい。チロルチョコとか作ったんですよねー)。手先が器用だとか、芸術的センスにあふれているとか、そういったことは残念ながらなかった私ですが、自分の作品を生み出すというのは楽しいものでした。

自分の作品の中で特に気に入っていたのは、粘土で作ったマグカップ。休憩時間にはこのマグカップを実際に使わせてもらうことができ、それも大きな楽しみだったんですよね。自分のカップで飲むコーヒーは格別だったなあ。

びしょ濡れになったあの日

美術の時間といえば、印象に残っている出来事があります。それは中学生のときのこと。
その日取り組んでいたのは陶芸。私の向かい側の席にA君、A君の隣にB君が座り、それぞれ作業していました。ゆったりとした雰囲気でたわいもない話をしながら、粘土をこねこね。粘土が乾燥して硬くなってきたら霧吹きで水をかけてやわらかくして、またこねこね。

そのときです。突然水しぶきが飛んできました。どうやらいたずらっ子のA君、霧吹きを使って私に話しかけてきたようです。そこで私もこたえます。同じように霧吹きで。
するとA君からはすぐに反応がありました。「冷たいなあ」なんて言いながら霧吹きでの返事。気が付けば私たちは、粘土そっちのけでそんな霧吹きコミュニケーションに熱中していたのでした。何やってたんでしょうね、全く。

もちろん先生から注意を受けました。「やめなさい。今は美術の時間よ。粘土に集中して」。はい、おっしゃるとおりです。反省です。私は気を引き締めました。

ところが。先生の言葉にはまだ続きがあったんですよね。それは思いがけないものでした。「今はやめなさい。後でいくらでもやらせてあげるから」。先生は私たちのために、驚きの水かけタイムを用意してくれたのです。

その日の作業が終わった後、その時間は本当にやってきました。A君と私、そしてB君も加わり、みんなで水の掛け合いです。

シュッシュッ、シュッシュッ。3人は霧吹きで勢いよく水を飛ばします。A君は、もちろん私に向けて。A君を慕っているB君は、やっぱり私に向けて。私は二人に向けて。2対1ではありませんか。何かちょっと悲しい。

でも負けてはいられません。私も日ごろのストレス発散とばかりに無我夢中で噴射しまくります。シュッシュッ、シュッシュッ。しばらくの間思う存分そんなことを続けたのでした。

水かけタイムが終わると、二人から攻撃を受けた私はもうビショビショ。悲惨な状態だったことは言うまでもありません。「水も滴るいい女」の出来上がりです(笑)

それにしても、なんて自由な美術の時間だったのでしょう。忘れられない思い出です。

ライター:なみ