連載

なみの全盲ありのままライフ:め書きと格闘した点字競技会

前回はドロップオフという厳しい歩行訓練について書きましたが、盲学校で受けたスパルタ指導はそれだけではありませんでした。点字に関してもビシビシ鍛えられたんです。そこで今回は、盲学校の点字学習の中で印象に残っている出来事をお話しします。(未読の方は併せてこちらもお読みください→なみの全盲ありのままライフ:恐怖のドロップオフ

厳しくて優しい先生

厳しい点字指導といえば、小学3年生のときの担任の先生を思い出します。点字を打つときの姿勢や手の動かし方など、細かく教えてくださった先生。本当に熱い指導でした。私はびっくりするほどできが悪かったので、いつも怒られてばかりいたような気がします。それも大声で。

でもこの先生、そんな私のためにお手製の点筆(点字を打つ道具)をプレゼントしてくれたんです。私の手に合わせて作ってくれた、世界に一つだけの点筆。これのおかげで点字を打つのがとても楽になりました。その点筆を使って、私は一生懸命点字を練習しました。「点字競技会」というイベントに向けて。

点字競技会は、私の通っていた盲学校では毎年行われていたイベント。日ごろの点字学習の成果が試される場です。競技はめ書き・五十音書き・写し書き・聞き書き・速読みの5種目。どれだけ速く点字の読み書きができるかを競うというもの。これがなかなか大変だった…。

め書きとの格闘

その厳しい先生の指導を受けて迎えた点字競技会。それは私にとってとても印象深いものでした。特に、私を一番悩ませていた「め書き」のことは忘れられません。

点字は6つの点の組み合わせで作られているわけですが、そのすべての点で表されるのが「め」という字。「め」は点字の基本なんですね。
(点字をあまりご存じない方も、機会があれば「め」は自信を持って読んでくださいね)
め書きというのは、その「め」を2分間ひたすら打ち続けるというものです。「めめめめめめめ」って。
点字「め」の文字

これはもう、私からするとただただ疲れるだけの競技でした。もちろんこれにはちゃんと意味があるはずで、点字を速く正確に書くために必要な訓練なんだろうとは思います。でもそんなの知ったことではありません。つらいものはつらい。

とは言っても逃げるわけにはいかないので、心の中で悪態をつきつつも日々練習に励みました。だから本番では、「やるからにはしっかりやろう!」と張り切っていたんです。

あれほど長かった2分間がこれまでにあったでしょうか…。
め書きの始まりの合図が聞こえた瞬間は、自己最高記録を出す気満々だった私。1点1点真剣に打っていきました。丁寧に、だけどできるだけ速く。

でも30秒も経った頃にはそんな気持ちはしぼみ…
1分経った頃には腕の痛みに音を上げそうになり…
1分30秒経った頃にはもう何もかもどうでもよくなり…
やけになって手を動かしていたらなんとか終了、という状況。一気に力が抜けました。

まだほかの種目は残っていたけれど、私の中でその日の仕事はもう終わったも同然。息を切らしながら解放感に浸りました。

ところが、です。
2分間格闘した結果を確認してみると、まあひどいもので…。先生の反応は最悪。
友達が「よく頑張ったね!」などとほめられている横で、私はあれこれダメ出しを受けることに。私だって結構頑張ったのに…。大事な大事な点筆を思い切り投げつけたい。その衝動をどうにか抑えた、そんな点字競技会となったのでした。

ちなみに、ともに戦ってくれたその点筆は今も活躍中。大切に使っています。これほどの点筆はほかにありません。

それでも点字が好き

私は結局、点字競技会でいい結果を出したことなど1度もありません。点字の読み書きはあまり得意ではないようです。でも、こんなふうにして身につけた点字が大好き。私の世界を広げてくれた、いつも心のどこかにあったアウェイ感を払拭してくれた、とても大切な文字だから。

最近は、ついつい点字から離れがちになってしまっているのですが…
これを書いていて久しぶりに味わいたくなりました。「寝転んで、お腹の上に本を置いて読書」という至福の時を。

ライター:なみ