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なみの全盲ありのままライフ:超小心者の私が初めて海外に行った話

この原稿を書いている、9月の終わり。11年前のちょうど今頃、大学生だった私は、フィンランドにいました。私にとって初めての海外。「やっぱり日本とは空気が違うなあ(気持ちの問題かもしれないけど)」なんてはしゃいだあのとき。懐かしい。

ということで今回は、全盲小心者の私が初めて海外に行ったときのお話です。

やっぱり福祉先進国!

フィンランドと言えば、税金は高いけどそれに不満を持っている人は少ないという、福祉先進国。大学で社会福祉を専攻していた私は、この国の福祉現場を見学する実習に参加することにしたんです。

超小心者の私だから、海外でちゃんと話せる自信は当然ありませんでした。日本語でさえうまくコミュニケーションとれないというのに。それでも行ってみたかったんですよね。持ち前の好奇心が抑えられなくて。

フィンランドに滞在したのは約10日間。さまざまな福祉施設を見学しました。もちろん小心者っぷりは十分発揮したけれど、それでも多くの学びを得ましたよ。

ヘルシンキ中央駅正面入り口前でポーズを取る4人の女子学生

特に興味深かったのは、「フィンランドの福祉施設は驚くほどおしゃれ」というところ。福祉施設というと「閉鎖的な空間」という印象があったのですが、そんな雰囲気は感じられなかったんです。思わず「こんなところに住みたい!」なんて言ってしまうほど。施設の利用者と地域の人々が自然な形で交流していたりもして、すてきだなと思いました。
さすがフィンランドです。

世界一まずい飴

さて、旅先で私が特に気になるものと言えば、食べ物です。フィンランドには、私の好奇心をくすぐる珍しい食べ物があったんですよ。その名は「サルミアッキ」。フィンランド人が大好きだというお菓子です。「世界一まずい飴」なんて呼ぶ人もいるくらい不思議な味のお菓子なんですよね。

どれくらいまずいのか。気になって食べてみたら…。それはもう衝撃的でした。期待を裏切らないまずさ。ゴムみたいな味、とでも言えばいいのでしょうか。まあゴムなんて食べたことないからわからないけど。

で、みんなにもぜひ食べてもらいたくて、大量に買って帰って会う人会う人に配りました。めちゃめちゃ嫌がられたのは言うまでもありません。

フィンランドのバリアフリーってどうなの?

そしてもう1つ旅先で気になること。それはバリアフリー事情。福祉先進国だから、そのあたりもさぞかし進んでいるのだろうなあと思っていたのですが…。現地で過ごしてみると、私の感覚では「あれ?そうでもないかも?」だったんですよね。11年前のことなので今は違うのかもしれませんが。

まず、日本ではよく見かける点字ブロック。私の歩いた範囲では見当たりませんでした。また何度かバスに乗る機会があったのですが、すごく乗りにくいという印象。車内アナウンスがないんです。バスや電車でアナウンスのある国はほとんどないと聞いていましたが、フィンランドも例外ではなかったんですね。

私は疑問に思いました。視覚障害者は困らないのだろうかと。こんな状況で単独歩行なんてしづらいのではないかと。

でも話を聞いてみると、フィンランドの視覚障害者はそれほど困っていないようなんです。なぜなのか。それは、「困っている人には声をかける、そんな風土が根付いているから」だというのです。点字ブロックなどなくても、車内アナウンスなどなくても、周囲の人に気軽にサポートを依頼できるから問題ないというわけですね。

フィンランドの人々と関わってみると、確かにみんな「助け合いの精神」を持っているように感じられました。障害者を「特別視」するような感じなんてありません。これってすてきなことですよね!

だけど。やっぱり私には「うーん…」なんです。そういう環境って、全盲小心者としては非常に生きづらい!サポートをお願いしやすいというのはありがたいけど、それでもお願いするのって気が引けるんですよー!

もちろん私だって、困ったことがあれば変に遠慮せず助けを求めたいとは思います。でも、「人の助けを借りることが前提」みたいなのはどうなんだろう。助けを借りられないときだってあるはずなのに。助けを求めたくないときだってあるはずなのに。って全盲小心者のわがままかもしれませんが。

障害者にとって生きやすい社会を作る。そのためには「サポートし合うこと」が大事。だけどそれだけでは不十分。「サポートがなくても大丈夫な環境を整えること」も考える必要があるのではないでしょうか。「小心者にとって生きやすい社会」を実現するために。
…なんて切実に思う私なのでした。

ライター:なみ

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