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なみの全盲ありのままライフ:幽霊よりも怖いもの

夏と言えば、怖い話ですよね。皆さん、怖い話はお好きですか?
私はねー…
好きじゃないし嫌いでもない、という感じでしょうか。想像力がなさすぎるせいだと思うのですが、幽霊とか正直よくわからなくて…。

ということで今回は、私にとっての「幽霊」とか「怖いもの」についてお話しします。

幽霊と私

幽霊っていったいどんなものなのか。よくわからないので、試しにiPhoneのAIアシスタント・Siriさんに聞いてみました。
「ねえねえSiriさん、幽霊って何?」
するとSiriさん、こう言ったんです。
「いいえ、安心してください。なみさんのiPhoneが震えるのは、ポルターガイスト現象ではありません」
いやいや…。会話になってないんですけど…。でも面白いじゃないの。とりあえず安心しておくか。

考えてみれば、私も怖い話に全く縁がなかったわけではないんです。盲学校に通っていた頃、怖い話の好きな友達が何人かいて、そういうのをよく聞かされたことを覚えています。
先生もよく怖い話の本を読んでくれていました。宿泊学習のとき、寝る前に飛び切り怖いのを読んでもらったことがあるのですが、みんな相当びくついていたっけ。でも私は、怖いというより何となく面白いと思ってその話を聞いていたような気がします。

あ、そういえば、私自身があまりにも影が薄いから幽霊みたいとか言われたことがあったな。なんて失礼な話。まあ、私もそれに乗っかって「うらめしや~」とか言って遊んでたんですけどね。

怖い音がある

そんな私も、幽霊を怖がる人の気持ちがわからないわけではありません。私にも、得体の知れないものを恐れる気持ちはあるから。

では、私はどんなときに怖いと思うのか。それは怖い音を聞いたときです。心乱されるような不協和音が耳に飛び込んできたら、もう何か出てきそうで聞いていられません。

例えば緊急地震速報のチャイム。あれは怖いですよねー。びくっとしてしまいます。それもそのはず。あれは怖いと感じるように作られてるらしいじゃないですか。もちろん「地震が来る」と思うから怖いというのもあるわけですが、音自体に怖い要素が含まれてるんだそうですね。音程が急激に変わること、そして不協和音がポイントなんだとか。

音楽だと、例えばビートルズの『Blue Jay Way』がたまらなく怖いです。霧に包まれたロサンゼルスで友人たちを待ち続けている。長く待たせないで…。長く待たせないで…。そんな曲。そのときの情景が、気持ちが、しっかり伝わってくるような不気味なサウンド。ジョージには悪いけど、ビートルズの中では嫌いな曲に入るかなあ。でも傑作であることは間違いありません。

私があえて怖い体験をしようと思ったら、そういう音楽を聞くのが一番なのかもしれませんね。

それより身近なものが怖い

でもね。
得体の知れないものには確かに恐怖を感じるけど、それ以上に怖いのは、もっと身近なものではないでしょうか。私の場合はやっぱりあれです。

私、一人暮らしなんてできないとずっと考えていました。その理由は何か。恥ずかしい話なんですが、虫が怖かったから。もし虫に遭遇してしまったらどうするのか。一人で対処できる気がしない。想像しただけで恐ろしい。私にとっては大問題だったんです。まあ結局一人暮らしするようなことはなかったわけですが。今も部屋の中で虫の音が聞こえてきたらもう、身動き取れなくなるんですよねー。

あとね。
今切実に怖いことがあるんです。それは書き上げた原稿を提出すること。
もう何度も経験していることなのに、まだまだ慣れません。思い切って提出して返信メールを受け取っても、すぐには開けないんです。だってだって、「何これ、手抜きした?書き直して」とか書かれてるかもしれないじゃないですかー。(今のところそんなこと言われたことないんですけどね。むしろほっこりするような内容の返信が多いんですけど)

この原稿出すのも怖い。で、「ねえ、怖いんですけどー!!」って、藁にも縋る思いでSiriさんに助けを求めてみたら…
「落ち着いて、深呼吸してください。大きく息を吸って…吐いて、吸って…吐いて」って言ってくれました。
……Siriさん、優しい!!

ライター:なみ