先日Navilens(ナビレンズ)の無料版が公開されました。日本ではまだ馴染みがないですが、地元スペインをはじめアメリカや諸外国では視覚障害者の移動を助けてくれるアクセシビリティツールとして広く普及しつつあります。
Navilensとはどのようなもので、日本での展開がどうなっていくのか。そのあたりをNPO法人アイ・コラボレーション神戸の北山ともこさんに教えていただきました。
Navilensってなに?
Navilensは情報が埋め込まれたタグ(QRコードに似た四角形のカラフルな図柄)とそれを読み取るアプリからなります。例えば、ある施設の壁や柱に印刷したタグを貼っておきます。訪れた人はNavilensアプリを起動してスマホを宙にかざします。するとアプリがタグをキャッチ。埋め込まれた情報を音声で知らせてくれます。
タグには現在位置の状況や周辺情報など、管理者があらかじめ必要な情報を設定することができます。施設内のあらゆる場所にタグがあれば、どこにいても迷うことなく目的の場所に移動できるでしょう。
技術の進化で便利になる社会。視覚障害者用のナビゲーションシステムや移動支援ツールも増えてきました。そんな中でもNavilensはかなりの優れものだと思うのです。
まず何よりもシンプルであること。利用者はスマホにアプリをダウンロードするだけです。次に設置が簡単なこと。施設に特別なデバイスや機器を設ける必要がありません。
さらには。
読み取りが速い。アプリがタグを検出すると瞬時に読み取ってくれます。
フォーカスの必要がない。スマホのカメラにピッタリ焦点を合わせなくてもいいので視覚障害者も心配いりません。
遠くてもOK。15メートル先までタグを見つけてくれます。(タグの大きさによるそうですが…)
などなど。
いかがでしょう。視覚障害者には大変使い勝手がよく、且つ施設側の費用や労力の負担も少なくて済むのです。
Navilensを試そう
言葉による説明だけではピンと来ないかもしれませんね。ということで、試せる環境があるかたは一度やってみてください。
①スマートフォンにアプリをダウンロードする
お使いのiPhoneまたはandroidスマホにNavilensアプリをインストールします。
②タグを印刷する
下のタグ画像をクリックして表示されたPDFファイルを印刷してください。



③印刷したタグを壁に貼る
家の中のどこかに②のタグを貼りましょう。
④スマホをタグの方に向ける
スマホでNavilensアプリを起動したらタグがある向きにかざしてください。スマホ内蔵カメラにしっかり焦点を合わせなくても読み取ってくれます。
そして、
パターン1なら、〇〇センチメートル先、会議室。
パターン2なら、〇〇センチメートル先、非常口。
パターン3なら、〇〇センチメートル先、階段。
と、教えてくれるでしょう。
プリンタがなくても、アプリを入れたスマホとは別にもう1つ端末機(パソコンなど)があれば、②のPDFファイルを画面上で読み取って確認できます。ぜひ体験してみてください。
無料版を広めよう
さて海外では広まりつつあるNavilens。日本ではどうでしょうか。いろいろな用途で活用できるため、大型雑貨店などで商品管理に使われているケースはあるようです。ただ視覚障害者用のアクセシビリティ利用としての国内展開はまだ実現していません。
そこで日本におけるNavilensのアクセシビリティ利用を牽引していこうとするのがアイ・コラボレーション神戸です。まずはお膝元の神戸から実証実験をすべく、さまざまな取り組みを進めています。そのひとつが無料版の周知活動。
本来Navilensは有償で自由度の高いオリジナルタグを販売しています。そして駅、建物、公共スペースなどを所有する企業や自治体がそれを購入。各々に適した情報をタグに埋め込んで運用します。実際のバルセロナのメトロは、時刻表と連動して間もなく電車がきますと知らせたり、○○行きの列車は〇番線乗り場です、と教えてくれます。
これに対し、固定の情報を埋め込んで提供しているのが無料版になります。ある学校からの要望を受けてNavilensが対応しました。その後世界中の学校と協会(福祉施設)に対して使用を認めています。上に貼った3パターンのタグも無料版で用意されているものです。
学校および福祉施設の職員の方は、Navilens無料版ダウンロードページからタグを取得してご活用ください。また関係者以外の方は地域の学校や福祉施設に薦めていただけたらと思います。
展望が見えてきた
無料版をきっかけにNavilensの認知度が高まれば、オリジナルタグの広がりも期待できます。はたして今後の見通しはどうなのでしょう。アイ・コラボレーション神戸の具体的な進め方などを北山さんにお尋ねしました。
まずは実証実験によってノウハウを蓄積し日本に適したマニュアルを作成していくこと。そのためにこの活動に賛同し導入を検討してくれるところと調整を図っています。その後には視覚障害が働く就労継続支援事業所などに横展開していきたいと考えています。
バルセロナのメトロではオリジナルタグの作成は職員さんの仕事。しかし日本の自治体や公共交通機関の職員さんは現状の仕事量からもそういった余裕はないでしょう。そこで外注先として視覚障害者が働く事業所に発注してもらうのです。ゆくゆくは視覚障害者が自ら必要だと思う施設にNavilensを導入してもらうよう営業活動をおこない、自分たちがわかりやすいと思うタグを作成する。これこそがアイ・コラボレーション神戸が理想とするNavilens拡大のサイクルです。
新型コロナウイルスの影響でいったんはストップしたNavilens普及活動。いま新たにアイ・コラボレーション神戸の巻き返しが始まりました。