連載

なみの全盲ありのままライフ:夫婦で過ごすまっすぐな日々

外出自粛の日々。私はずーっとお家にいます。ひたすら夫と二人きり。だけど今のところ、お互い息が詰まるといったことはなく、うまくやれているんですよね。どういうわけか。

ということで今回は、夫との生活についてお話しします。

夫との出会い

それは大学生のときのこと。周りに同じような境遇の友達がいなくて寂しかった私は、視覚障害関連の学生団体のイベントに参加しました。そのときに気さくに話しかけてくれたのが夫でした。

彼も視覚障害者で、大学生活の悩みなど語り合っていると共感できるところだらけ。引っ込み思案な私。社交的な夫。性格は正反対だけど趣味や価値観は似ていて、だんだんと仲良くなっていきました。

告白されたときのことは今でもよく覚えています。頑張ってないところが好き。そう言ってくれたんです。

頑張ってない…。そう、確かに私は全く頑張っていなかった。「ばれたか」って感じでした(笑)

まっすぐすぎる夫

夫は、本当にまっすぐな人です。思ったことはすぐ口に出してしまいます。嘘はつきません。誰に対しても容赦なくストレートな発言をするんですよね。たまにヒヤヒヤします。

考えていることがよくわかるから楽ではあるのですが、それを素直にぶつけられるとイラっとすることもあります。で、言い返してしまうと喧嘩になるから困るんですよね。

喧嘩になったらもう大変。夫はひとたびスイッチが入ると言葉のマシンガンを発射しまくるんです。私はそれがものすごく苦手だから、喧嘩はできるだけ回避したいんですけどねー。

私、お笑いコンビの和牛が大嫌いだったんです。初めて漫才を見たときに何か嫌な感じがして。どうして嫌な感じがしたのか。よくよく考えてみたら、それは怒ったときの夫をほうふつさせるからだったんですね。

和牛のネタに出てくる「水田くん」という人物。この人がとにかく理屈っぽい。例えば彼女が手料理を振る舞おうとしたとき、水田くんはネチネチ小言を言います。料理人の水田くんにはいろいろとこだわりがあるんですね。言っていることは正論なんだけど、彼女の気持ちは完全スルー。俺が作ったほうがおいしいからと自分で作り出す始末です。

ああもう、あれはまさに怒ったときの夫!しかも夫は水田くんの数倍声が大きくて威圧的だから余計に質が悪…
あ、あんまりこんなこと書いたら怒られるかなあ。

ちなみに、今は和牛の大ファンです。だんだんと親近感がわいてきて。夫と一緒に見て、「似てる似てる!」と大笑いしてます。

「まっすぐ」だからうまくいく?

そんな夫と暮らし始めて、10年経ちました。どうしてここまでやってこられたのでしょう…。もしかしたらそのカギは、夫の「まっすぐすぎる」というところにあるのかもしれません。

言いたいことを言う。やりたいことをやる。やりたくないことはやらない。私も夫に倣ってそういうことを実践するようになりました。夫はたいていそれを受け入れてくれるし、私もたいてい彼のまっすぐな言動を受け入れています。すごく居心地がいい。

お互い一人になって自分の時間を持つということを大切にしているから、ストレスはほとんどありません。家事は分担していますが、やりたくない日はやらないというのもありなんですよね。そのままの自分でいていい。それがわが家です。

夫と出会ったことで、私の生き方は変わりました。どうしてダメな自分を変えられないのか、どうしてもっと頑張れないのかと自分を責め続けていたけれど、その気持ちはいつの間にか消え、「今の自分を活かしていけばいいんだ」と思えるようになったんです。だから私は、今も堂々と「頑張ってない」を継続中。毎日がとても充実しています。こんな私を受け入れてくれる夫に感謝です。これからも私たちは、まっすぐな日々を送ることでしょう。

ただ…
やっぱり、和牛スイッチをうっかり押してしまうようなことは避けたいところ。彼がお腹をすかせているとか眠いとか、そういうときは危険なので要注意。余計なことを言ってはいけません。私たちの平和な暮らしに必要なのは、自由と思いやりと、ほんの少しの我慢なのです。

ライター:なみ