取材記事

見えない人にも「見える」を全力でサポートする、株式会社シード

2019年10月内定式_アイメイト寄付贈呈式

東京都文京区に本社を構えるコンタクトレンズ事業大手の株式会社シード。全盲の方、あるいは矯正視力の出ない弱視の方は、自分の生活には関係ない会社だと思われているかもしれません。

ですがシードの社会貢献活動を知ればその認識は一変するでしょう。こんなにも視覚障害者に向き合っている企業があることをぜひ知ってください。

創業者の精神が愛のあるプロジェクトへと発展

「Pureな愛(eye)をありがとうプロジェクト」
見えるをサポートする、を社是とするシードの視覚障害者支援活動です。プロジェクトメンバーであり、経営企画部社長室所属でもある金澤さん、及川さん、大津さんの3名の女性にお話を聞かせていただきました。

プロジェクト発足は2011年。盲導犬の育成と視覚障害者の社会参加を促進する目的でスタートしました。背景には、社長の「見えるをサポートする」を広げたい思いと、震災後の社会貢献に対する気運の高まりがありました。

そこには創業のスピリットも大きく影響しています。シードの創業者は義眼師の方でした。戦争の爪痕がまだ残っていた時代。失明したり眼球を失った方のケアをしていました。あるとき順天堂大学の先生から、海外にコンタクトレンズというものがある。研究してもらえないか、との相談を受けました。こうして見えない人を助ける仕事から、視力の出にくい人を助ける仕事へ。

形は変わっても「みんな見えるようになって欲しい」という精神は現在の社員たちにも受け継がれています。
   (写真左から、大津さん・金澤さん・及川さんの3人)

学び体験することから生まれる企業文化

現在プロジェクトは上席の方を含めて5名体制。主な活動としては、メンバー4人による月2回のブログでの情報発信、イベントの企画や参加、各種団体との交流、募金活動や啓発活動など、多岐にわたります。

また活動する上で必要な知識や経験を身につけることも怠りません。

取材の翌日は、及川さんと大津さんが盲導犬の繁殖奉仕のご家庭を訪問する予定になっていました。プロジェクトの立ち上げから携わっている金澤さんによると、繁殖ボランティアさんの、「子犬を死なせてはいけない、無事に生まれさせてあげなくてはというプレッシャーは相当なもの」だそうです。お2人もいろんなお話を聞いてますます成長されることでしょう。

視覚障害への造詣が深い金澤さんも、最初の頃は盲導犬を触りにいったり、手引きの仕方がわからずうまくできなかったり。今思えば恥ずかしい、と振り返ります。しかしそこから手弁当で視覚障害者の料理教室・マラソンの伴走・当事者が集まるバーベキュー大会などに参加され多くのことを学ばれました。

こんな強力メンバーによって推進されているPureな愛(eye)をありがとうプロジェクト。毎月のように催しや企画がある中で、特筆すべきは新入社員の方の入社式。アイマスクでの盲導犬との歩行体験や、誘導方法のシミュレーション体験をおこないます。毎年の恒例であり、シードの企業文化を育む基礎になっているのでしょう。

お客様・株主・社員全員が一体となっての活動

当初プロジェクト創設にあたって、視覚障害者の見えるをサポートするには何が必要か検討されました。歩行時の情報を得る手段のひとつに盲導犬があることから、売上の一部を公益財団法人アイメイト協会に寄付することなりました。

2011年から2018年まででアイメイト協会への寄付総額は実に6,700万円を超えています。さらに今では失明予防、緑内障の啓発、角膜移植などさまざまな方面に寄付の範囲を広げています。シードではこの寄付金を「お客様からいただいたお気持ち」として各団体に渡しています。売上の一部ということは、すなわちシード製品の購入者であるお客様一人ひとりからの浄財と言えるのです。

盲導犬育成団体について。シードの盲導犬育成を応援する姿勢に団体ごとの分け隔てはありません。寄付の面では限りがあるためアイメイト協会だけになっていますが、利用者がそれぞれの方針や特色を理解して選択できることが大切だと考えています。

ほかにも、株主優待の寄付選択もあります。株主の方が商品やサービスを受ける代わりに寄付をするというもの。多くの方が、ご自分が株主優待の特典を受けるのではなく寄付という形で支援してくれています。

プロジェクトメンバー以外の社員の貢献も見逃せません。営業の方は自分の取引先に募金箱の設置をお願いして回っています。その結果、今では全国に数百個ものアイメイト募金箱が置かれるようになりました。
同様に、半年に1度発行しているCSRレターも、地域のさまざまな場所に置かせてもらっています。シードのCSR活動をひとりでも多くの方に知ってもらえる大切なツールです。

web上でもCSRレターのバックナンバーをご覧いただけます。

期待の人財とともに輪を広げよう

ほんの一例しか紹介しきれませんでしたが、シードの「見えるをサポートする」本気度がおわかりいただけたのではないでしょうか。

最後に。これからのシードを担うであろうお三方に、突然の無茶ぶりで将来の目標をお聞きしました。

金澤さん「自分が年を取ったときに住みやすい日本であってほしい。そういうことに近づける何かを仕事の中でもやっていきたい。(インタビューの途中でも、ホームドアなどのハード面の強化ばかりに目を向けず人が自然に助け合えるようにしていきたいと仰ってました)」

大津さん「地元静岡に帰ると、コンタクトレンズのことも視覚障害に関することも、家族や友人は意外と知らないんだと気付いた。身近なところから周知していきたい」

及川さん「プロジェクトに入ってからはまだ1年未満ですが中心を任されている。もっといろんなところに出て行って自分から勉強していきたい」

まさに「企業は人なり」の言葉に相応しい、Pureな愛(eye)をありがとうプロジェクトの皆さんでした。視覚障害者の方もぜひこの活動を広げる輪に加わってください。