取材記事

情報弱者を卒業しよう! 新聞快館が視覚障害者の「知りたい」に応える

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視覚障害者は情報弱者と言われることがあります。

情報を得る手段はいろいろなのでITがすべてではありません。ただスマートフォンやパソコンが強い味方になるのも事実です。これを読んでいただいてる視覚障害者の皆さんは情報機器を使いこなしている方がほとんどでしょう。そんな人たちにこそ、人生の途中で視覚に障害を負った、情報機器の扱いがままならない方たちに、新聞快館の存在を広めていただきたく思います。

見えない・見えにくいからこそパソコンは必要だ、と言われて使い始めたものの、どうも操作に慣れなくて…。せめて興味のあるウェブニュースだけでも自分で選んで読んでみたい。そんな思いに応えてくれるのが、スクリーンリーダー対応のニュース閲覧専用ブラウザ・新聞快館です。

誰でもすぐに使えるハードルの低さが魅力

新聞快館はWindowsに対応したパソコン用ソフトウェアです。もちろんスクリーンリーダーにも対応していて、これさえあればパソコン初心者の視覚障害者の方も、インターネット上に一般公開されているニュースや天気予報、その他さまざまな情報を手軽に読むことができます。

新聞快館の特徴は大きく3つ。

まず操作性。とにかく簡単で使いやすいです。矢印キーとエンターキーとEsc(エスケープ)キーだけで主要な操作は完結します。しかもキビキビと動くのでストレスもまったく感じません。また動作ごとに適切な効果音が鳴るため、実行中の操作に安心感を与えてくれます。

続いて入手性。開発者AKさんが運営されているサイトからダウンロードすればすぐに使えます。しかもなんと無料! 世の中に同様のニュース閲覧ソフトはいくつか販売されていますが、状況によって補助を受けられないケースでは購入者の負担も小さくありません。新聞快館は使っていくうちに有料の機能拡張版が欲しくなるかもしれませんが、最初のうちは無料版で十分満足できます。

最後に柔軟性。AKさん個人で開発されているため、ニュースソースの追加が容易です。メーカーが販売するソフトウェアの場合、記事配信元の選定を慎重にならざるを得ません。ところが新聞快館はAKさんの作業時間さえ取れれば追加が可能です。AKさんも利用者からの要望を極力聞き入れる方針なので、今後も読めるニュースはどんどん増えるでしょう。あっ、こんな情報元の記事が新しく追加されてる!と発見できるのも楽しみの一つになりそうです。

早く使ってみたい方、以下のサイトからダウンロードできます。本文はまだありますのでお時間に余裕のある方は続きもぜひお読みください。

3役を兼ね備えた稀有な存在

前述のとおり新聞快館は視覚障害者が使いやすいように設計されているのですが、これにはAKさんが持つ3つの役割が関係しています。

その3つの役割とは、

1.視覚障害の当事者
2.視覚障害者の支援者
3.プログラム開発者

です。

AKさんはご自身が視覚障害者ですので、自分が不便だなと感じること、あればいいなと思うものが明確です。さらに視覚障害者の支援団体に勤務し、日々視覚障害者の方からICT利用に関する相談を受けているため、幅広い困りごとに接しています。さらに大学で情報処理を学ばれてきたのでプログラミングもお手の物。となれば使いやすいものが出来上がるのも納得です。

システム開発はユーザーのニーズを的確に把握するのが肝心ですが、まさにAKさんの場合は鬼に金棒、プラス機関銃でも持っている感じでしょうか。

ものづくりに共通する重要なスピリット

そんなAKさんですが、いくらユーザーの立場で開発したとは言え、名だたるソフトウェアメーカーが作り上げた製品に比べたらまだまたとの思いがあります。ただご本人曰く、出来はそこそこでも無料で簡単にウェブニュースが読めたら喜んでくれる人がいるのではないか、とのこと。高性能高品質でやや高額なメーカー製品との間にある階段の一段を埋める存在でありたい、と考えています。

きっかけのひとつとなったのは、AKさんの元に個別相談に来られたある視覚障害者の存在でした。その方はどうしてもブラウザ操作ができなかったそうです。本人は頑張って覚えようとしているのですが無理でした。

音声パソコンを使いこなしている視覚障害者の多くは、ブラウザ操作にさほど問題を抱えていないでしょう。それでも、どうしても難しいと感じる人もいるとわかった。だったらその一人のためになんとかしたい、その人にもインターネットを楽しんでもらいたい。

テレビゲームが大好きなAKさんには、ご自身も意識していないうちに任天堂の元社長、故山内溥さんの言葉が心に残っていたと言います。「大人は多少操作が複雑なものでも使わないといけないとなるとマニュアルを読んでくれる。ただ子どもはそうはいかない。飽きてコントローラーを置かれたらおしまい」というもの。利用する側が苦労しないで使うために、作る側がいかに苦労して開発するか。これぞものづくりの精神だと思います。

使いやすいものは誰が使っても便利

ここまで新聞快館をパソコンに慣れていない視覚障害者のためのもの、と繰り返しご紹介しましたが、パソコン上級者にもとても便利なものです。もしかするとスクリーンリーダーを使用していない晴眼者も、お気に入りの記事をサクッと読む場合に一般的なブラウザより使いやすいかもしれません。(個人の主観によります)

新聞快館を気に入ったパソコン初心者の視覚障害者の方は、ぜひAKさんの他の作品も試してください。インターネットラジオを訊くための専用ブラウザや、タッチタイピングの練習用ソフトウェア。きっとあなたとパソコンの距離を縮めてくれることでしょう。