初めての妊娠・出産・子育て。こういう時はどうしたらいいの? これってみんなはどうやってるんだろう? 日々わからないことや困りごとが出てきて、ひとりで悩んでいる視覚障害当事者の新米ママさん!新米パパさん!
周りに相談できる人がいないなら、日本全国の頼りになる先輩に聞いてみてください。見えない・見えにくい状況の中、お子さんとともに成長してきた「かるがもの会」の皆さんがきっと力になってくれます。医療や育児・教育の専門家でなくても、普通の、それでいて偉大なるお母さんお父さんからいただくアドバイスは実体験にもとづく貴重なものに違いありません。
かるがもの会(視覚に障害をもつ親とその家族の会)は、全国的にも珍しい、視覚障がいのある親やその家族が集まる育児サークルです。
みんな悩みながら親になっていった
今回かるがもの会の会員さんにお話を伺いたいとご相談したところ、代表の金光弓子さんに大変ご尽力いただきました。そして会員の皆さまのご協力もあって、アンケート形式で質問にお答えくださいました。質問は全部で5つ。前後編にわけて発表してまいります!
質問1:かるがもの会を知る前にもっとも困っていたこと、あるいは不安だったことは何ですか?
・近くに同じ年代で子育てしている視覚障害者がいなかったので、先のことが不安だった
・同じく近くに子育て世代の友人がおらず全般的に不安があった
・眼疾の遺伝に対する不安があった
・視覚障害をもった親がしっかり育てていけるのかすべてが不安だった
・子育てに自信がなく、子どもが姑や舅にばかり懐いて悲しかった
・離乳食が始まった時スプーンを子どもの口に運べず姑がご飯をあげていた
・この先どうなるだろうという不安、子どもが成長するにつれて悩みが出るだろうという不安
・子どもの表情や顔色、手足の仕草がわからず、ちょっとした変化に対処できなかった
・子どもが保育園などで「なんで○○ちゃんのママはお目目が見えないの?」と言われたときに、子ども社会で納得させられる回答ができるのか
・子どもが親の障害のせいでいじめられないか
実際に発生した悩み。これから起きるかもしれない漠然とした不安。どちらも、ひとりきりもしくは夫婦ふたりだけで抱え込むには大きすぎます。かるがもの会発足のきっかけが、ある全盲の育児ノイローゼのお母さんによる悲劇的なニュースだったそうです。悲劇が繰り返されないよう、かるがもの会の活動がますます広がって欲しいとあらためて感じました。
質問2:かるがもの会に登録してよかったこと、教えてもらって役立っていることは何ですか?
・親子そろって同年代の会員がいて同じ境遇のママと繋がり、悩みや情報を共有できた
・みんなそれぞれに頑張っていて自分も頑張ろうと励みになった
・子どもたちも自分たちだけじゃないと思えた
・視覚障害の親の手伝いをしている周りの子どもを見て自分の子どもも誇りを持ってくれた
・子どもたちに異なる年齢の知り合いができた
・親も子どもも年齢が幅広く、住んでいる地域も全国規模なので、いろいろな情報が聞ける
・何かを発信したときに相談員や先輩ママさんがすぐに返事をくれた
・子育てする上で必要な情報やアイデア、便利グッズ、イベント情報を教えてもらえた
・かるがも新聞で幼稚園や学校、PTAとの関わり方を読むことができ心の準備ができた
・会の役員やサイト管理をしたことでPCスキルが身に付いた
・お薬の与え方やおむつ交換の清潔なやりかたを教えてもらえた
・入園、入学や受験のあれこれを教わった(例:お名前シールの活用方法、手つなぎ散歩から見守り散歩への移行時期の工夫、受験生の親としてできることなど)
仲間がいることの強みと安心感がよくわかります。日々の子育てにまつわるノウハウや学校関連の対応方法といった実用的なことから、心の支えとしてのありがたさまで、会員の皆さんが入会してよかったという素直な気持ちが伝わる意見が多数みられました。
質問3:子育てに関する工夫で、晴眼者もこれやってみたらいいのに、と思うことがあれば教えてください。
・子どもたちに手伝ってもらい、それに感謝する
(子どもたちの自己肯定感や自立心を育むことに)
・積極的になんでもやらせて失敗から学び、人の助けに感謝するという経験を多くさせる
・気持ちに余裕をもって接する
・声を掛け合い助け合う
・子どもの体調変化に素早く気付くため顔や体を触って「体の温度」を敏感に感じ取る
(会話も増えてスキンシップにもなる)
・五感のうち視力以外の感覚を研ぎ澄ませ子どもの小さな変化を読み取る
・子どもと言葉による意思疎通を多くする、子どもに言葉で説明する機会を多くする
(子どもたちに、語彙力、人の話を聞く力、周囲の状況を判断する力がつく)
・顔の表情や態度といったうわべだけでなく見た目の下に隠された本質を見抜く
(声の調子、食事の食べ残し、脱ぎ散らかした洋服の場所、など心の窓からの情報を大切に)
何人かの方は、見える見えないにかかわらず、という前提で回答してくださいました。見えないからこそ大事にする感覚。見えても見えなくても子育ての本質に変わりはないという思い。どちらにも共感する部分は多いです。
かるがもの会をもっと知ってたくさん繋がろう
晴眼者の人たちだって子育ての悩みはたくさんあると思います。もしかすると、視覚障害という同じハンディキャップを持つ者同士だからこそ、晴眼者の人たちの子育てサークルより心を開いて悩みを共有できるのかもしれません。
かるがもの会ではメーリングリストで相談できたり、かるがも新聞でいろんな情報をもらえたりします。また、イベントや交流会もあるようですので、ご興味のある方はぜひホームページをご覧ください。
(後編につづく)