レクリエーション

アイデアの詰まった手作りおもちゃで視覚障害児に楽しさを届けよう

おもちゃっていいな!そんな気持ちにさせてくれる体験をしてきました。

ときは、2月15日(土)。場所は、神戸芸術工科大学プロダクト・インテリアデザイン学科のとある教室。同大学の非常勤講師・金井謙介さんによって毎年開催されているイベント、『おもちゃで遊ぼう 〜視覚を使わずに遊べるユニバーサルなおもちゃ〜』です。

金井さんが受け持つユニバーサルデザインという演習科目の一環で、学生さんに「見えても見えなくても遊べるおもちゃ」を課題として製作してもらいます。そして視覚に障害を抱える子どもたちに、出来上がった作品で実際に遊んでもらおう!という企画。

はたして、今年はどんなおもちゃが出揃ったのか。学生さんの知恵と工夫、そして子どもたちの遊んでいる様子をぜひお楽しみください。

教室の中に誕生した即席の小さな公園

今年参加されたのは3組のご家族とそれぞれのお子さんが4人。時期的に体調を崩して参加できなかったお友だちもいたようでちょっと残念。早く元気になって欲しいですね。

さて、毎年いろんなおもちゃが子どもたちを楽しませてくれるのですが、今年は今までにないユニークな特徴が。4作品のうち、当日出席された3人の学生さんの作品がどれもかなりの大きさ。おもちゃというより、もはや公園にある遊具のようです。

絵本の世界をからだ全体で体験しよう

まず最初にご紹介するのは、クッション素材のようなもので作られた大きな豆の木。童話「ジャックと豆の木」の体験型の絵本アトラクションとでも言うのでしょうか。床に置かれた状態で、這いつくばってどんどん上に(実際には前に)登って行きます。

童話のストーリーを知っていれば、より深くその世界観を想像しながら遊べますが、知らなくてもまったく問題ありません。木にまたがって登っていくと途中でたくさんの巨大スナップえんどうのようなものに手が触れます。マジックテープをベリベリと剥がすと中から豆のぬいぐるみ?が出現。豆を振ると音が鳴る仕掛けに。音の種類も豆によって違いがあり、次はどんな豆だろう、と飽きずに頂上まで進んでいけます。

ジャングルジムで多彩な遊び方をしよう

次は、新発想のジャングルジム。ふつうジャングルジムと言えば線(棒)で構成されています。ところが視覚に障害のある子どもたちにとっては、こっちに行けば当たる、こっちだと当たらない、と構造がわかりづらくうまく遊べません。

今回学生さんが作ったジャングルジムは面で構成されているので、手で触りながら足場を確認して一段一段上がっていけます。もちろん登って遊ぶ子どももいれば、いつの間にか打楽器のようにして楽しむ子どもも。面を覆う素材が場所によって異なるため、叩いてみるとちょっとづつ違う音が出るんです。つくづく子どもって遊びの天才だなぁと感じた瞬間でもありました。

ゆらゆら、ぐるぐる、不思議な感覚を味わおう

浅めのお椀のような大きな座布団型の乗り物。底は平面ではなく丸みを帯びています。どう表現しようかと思っていたら、あるお母様が「キン斗雲みたい」と仰ってました。まさにそんな感じです。

中に乗って右へ左へと重心を変えるとゆらゆらぐらぐら。外にいる人に回してもらうとコーヒーカップのようにぐる~んと回る。お父様に回してもらってぐ~るぐ~る楽しむ子どもや、ハンモックのようにひたすら揺れを楽しむ子ども。遊び方は人それぞれですが、みんな笑顔になっていました。

まさか、子どもの間に割り込んで体験するわけにはいきませんが、後半みんなが他のおもちゃの方へ行ってる隙に乗ってみたところ。とっても気持ちよかったです。

※トップ画像のパズルは、当日参加できなかった学生さんの作品。形と手触りでパズルのピースを判断しながら四角形に収まるようにはめ込んでいくゲームです。

遊びから学べること。子どもから学べること。

子どもたちが遊んでいるあいだ、終始あちこちから笑い声や拍手が沸き起こっていました。子どもが楽しく過ごせる空間は人を幸せにする力があるようです。

お母様がたによると、子どもたちの感想は体験型遊具すべてが楽しかった、とのこと。

ジャックと豆の木については「子どもたちも大きくなってくると、這い這いする機会がなくなるけれど、運動機能のためにも良いと言われているし、豆の木を登って行った上には何があるのだろう、とワクワクしながら這っていけるのも良い」とのご意見。

ジャングルジムの最上段に立って手を広げた女の子がいましたが、なんと「いつもは階段で手引きするだけでも怖がるんです」というお母様の言葉。おもちゃが子どもの可能性を広げてくれる場面に立ち会えた嬉しい瞬間でした。

そしてキン斗雲。多くの人から、これ欲しい、という声があがっていました。場所を取るので一般のご家庭に置くのはちょっと難しいかも。ですが製作した学生さんも有効活用されるのを願っていましたので、子どもたちが遊べる場所に置いてもらえることを期待します。

主催者の金井さんは、この企画以外にも、ライト・オン・デザイン・プロジェクトという視覚障害児とそのご家族を支援する会のメンバーとしてさまざまな活動をされています。それもあって、ユニバーサルデザインコースの学生さんには、見えない・見えにくい子どもたちのことを知って欲しいという思いが強くあります。

授業で作った作品はたいてい最後に講評会をして終わってしまいます。しかし本来は自分の作品が実際に使えるものなのか、意図通りに使われるのか、ユーザーからフィードバックをもらいさらに良くしていくのがユニバーサルデザインのプロセス。そのユーザー評価としての意味合いが、子どもたちに遊んでもらうこと。またそれを見て学生がどう学ぶのか。金井さんが重きを置いている点です。

参加者のお母様も話していました。学校の授業だけが勉強ではない。遊びから学ぶこともたくさんあるのだと。筆者にとっては、ユニバーサルデザインがこんなにもいろんな気づきを与えてくれるのだと学んだ1日でもありました。

全身を目いっぱい使って遊んだ子どもたち、心地よい疲れで夜はよく眠れたことでしょう。