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なみの全盲ありのままライフ:ヘルパーさんとお出かけエンジョイ中!

大阪で暮らし始めて10年。田舎育ちの私は、今も人の多さに慣れません。でも最近は、いろんなところに出かけて都会生活を満喫できるようになってきています。ヘルパーさんのおかげで。

ということで今回は、ヘルパーさんとのお出かけについてお話しします。

きっかけはプチ家出

私は「同行援護」という福祉サービスを利用しています。外出に関してサポートが必要なとき、それをヘルパーさんにお願いできるというサービスです。

このサービスを利用し始めたのは、大阪で夫と新生活をスタートさせたときのこと。と言っても最初は利用したいという気持ちはそれほどなく、「困ったときにお願いできれば…」というくらいに考えていました。

というのもですね、私、人づきあいが恐ろしく苦手で。ヘルパーさんと出かけたら何かと気を使うし、疲れるだけだから嫌だなあと思っていたわけです。ところがあるとき、そんな考えが変わるような出来事があったんです。

その日、私は夫と喧嘩をしました。結構激しい感じで。原因は些細なことだったのですが、なぜか思い切り火がついてしまって。新しい環境にまだ慣れていない頃だったので、お互いストレスがたまっていたようです。

そして、「もうやってられない。こうなったらプチ家出してやる!」とか思ってしまった私は、衝動的に家を飛び出したのですが…そこで重大なことに気が付いたんです。
私…
行くところがない。一人で行けるところがない!!ただ切なさをかみしめることしかできないまま、そのプチ家出は終わりを迎えたのでした。ほんの数分で。

結局何の意味もなかったプチ家出。でもこれは、大阪での外出について真剣に考えるきっかけとなりました。それまで外出に関して夫に頼りすぎていた部分があったなあ、と反省したんです。この状況を変えなければ。そう思った私は、その第1歩として積極的に同行援護を利用しようと決めたのでした。

フレンドリーなヘルパーさんとの出会い

というわけで、自分の趣味のためにヘルパーさんと出かけてみた私。でも人づきあいがどうしようもなく苦手だから、案の定人見知りを存分に発揮することとなり…。

ヘルパーさんはすごくよくしてくれたのですが、私は変な空気を醸し出すばかり。困ったやつだったんですね。好きなことのために出かけているはずなのに全然楽しいと感じられず、「やっぱり同行援護はちょっと…」という気持ちになったのでした。

そんなとき、一人のヘルパーさんに出会ったんです。それはとても衝撃的な出会いでした。

そのヘルパーさんは、誰とでもすぐに仲良くなってしまう、優しさと親しみやすさあふれる女性。リアクションがとにかく大きい。300円手渡すときに「はい、300万円」とか言う。そんな、いかにも「大阪のおばちゃん!」という雰囲気満載のお方。

初めて会った日、緊張していた私に、彼女はガンガン話しかけてくれました。「息子と同じぐらいの歳やから、なみちゃんって呼ばせてもらってもいいですか?」。その一言で距離がぐっと縮まったことをよく覚えています。

何度も言いますが人づきあいの苦手な私、初めて会ったヘルパーさんとはあまりしゃべれません。それが、彼女と話しているといつの間にか饒舌になっていたんですよね。ちょっとした悩み相談なんかもしたりするくらい。こんなふうに話せば、ヘルパーさんとのお出かけも楽しくなるんだ。彼女はそのことに気づかせてくれたんです。

それからは、ほかのヘルパーさんとももっと気楽に関わってみようと思えるようになりました。私が自然な感じで楽しんでいれば、ヘルパーさんも楽しそうな雰囲気なんですよね。それが伝わってくるとうれしくなります。

今では癒しの時間に

今では習い事に買い物にと、ヘルパーさんにはいろんなところに付き合ってもらっています。人の表情やお店の様子など、興味深い情報を詳しく伝えてもらいながら。
いつも新しい発見が盛りだくさんです。

どんな情報をどんなふうに伝えてくれるのかはヘルパーさんによってさまざまですが、皆さんそれぞれに得意分野があって面白いんですよね。例えばあるヘルパーさんは、お安いものを見つけるアンテナがとても鋭いんです。この方と買い物に行けば節約がはかどる!

同行援護を利用してのお出かけ。それは私にとって癒しの時間。以前は過剰に遠慮することも多かったけど、そういうのはもうやめることにしました。もしかしたら、ちょっと図々しいくらいになってきているかも…。

ライター:なみ