体験取材

第1回 視覚障害をキーワードに自由に語るミニ意見交換会 in 梅田

視覚障害者webメディアのミルクフ編集部です。

先日ざっくばらんなミニ意見交換会をおこなってきました。参加者は、遠隔からの代読や日常の見えない困りごとをサポートする株式会社リモートアシストの代表・藤井慎一さん、視覚障害児の教育に携わる学校関係者のTさん、そして当サイトの運営者で視覚障害当事者でもある筆者の3人。 

第1回目の今回は、特にテーマを決めず、視覚障害をキーワードにそれぞれの考える課題や、今後の在り方を話し合いました。とくにファシリテーターを設定しているわけではないので、各自が思い思いに話していくスタイル。結論を出すことも、誰かに答えを求めることもしません。ある意味、言いっぱなしの自由気ままな約2時間でした。

対話の中身 - 要約 ー

当日と同様、ここでも綺麗にまとめるなどという試みは早々に諦めました。ただ単に発言を抜粋して羅列するのみになりますがご容赦ください。

◆街中での視覚障害者サポート

時々耳にする、声かけや手引きに慣れてないので躊躇するという話。視覚障害者と接する機会が多いか少ないかでかなり変わってくる。盲学校や視覚障害者のリハビリテーション施設などの周辺では、スーパーの店員さんも飲食店の方たちも、自然な形でサポートをしてくれる。このように視覚障害者が街に溶け込んでいる状態が、全国どこの地域でもあたり前になればいろんな問題は解決しそう。

◆駅のホームドア設置

大阪では2020東京オリパラに次いで2025大阪万博の開催もあるため、ホームドアの設置数がここ数年で急に増えた。ただどうしても乗降客の多いところから優先となっている。また心配なのが、同じ駅の中で上り線だけ設置されていて下り線は設置されてないケース(※そのような駅があるとのこと。事実確認はできていません。)や、工事途中でホームドアはまだ設置されてないが台座のような機械だけが付いているケース。思い込みによる事故が一番危険なため、こうした点での配慮もお願いしていきたい。

◆街中の点字

中にはこれ本当に役に立っているの?と疑問に思うものもある。見えない人にとっては触らないとその場所に点字があることがわからない。3次元空間から点字の場所を探しあてるのは大変ではないか。また実際の効果よりもバリアフリーのアピールとして点字を備えている施設もある。設備は立派だが、その施設で働く方の視覚障害者に対するサポートが未熟で残念に思うことがある。

◆支援機器の日常生活用具としての認可

ITやAIの進歩による新しいテクノロジーの支援機器が増えている。リモートアシストもそのひとつ。購入希望者の中には価格面で諦められる方も。そのため日常生活用具の認可を受けられるよう日々自治体の方に話を持ち掛けている。しかし多くの自治体は前例がないと話を聞いてもらえない。まだ認可された自治体はなく、いかにひとつ目の壁を突破するかが直近の課題。

◆IT系支援機器の競合と棲み分け

たとえばAIを使った文字認識・物体認識・環境認識の機器は高額な専用機から、無料アプリまで数多くある。多様な製品やサービスがあるほうがユーザーにとっては便利。ただもともとが大きなマーケットではないし、製造販売側としては競合による分散は痛手ではないか。リモートアシストで言えば、be my eyesなどの無料サービスをどのように考えているか。

→差別化という考えはない。スマホを使いこなせる人は無料アプリを使用していただければよい。しかし世の中には高齢でスマホを使えない人や指先がうまく動かせない人もたくさんいる。その方々には簡単で使いやすい専用機やサポートが万全なサービスが必要。

◆情報が届かない人たち

情報格差の広がりにどう対応するか。スマホの便利なアプリをバリバリ使いこなす人。能動的に、web・その他メディア・支援団体・当事者仲間・福祉機器展などからさまざまな情報を得る人がいる一方、ほとんど情報を得ることなく表にも出てこれない人がいるはず。視覚障害者の集まりで必ずと言っていいほど話題に上る問題だがなかなか解決方法が見いだせない。リモートアシストも本来そういう方にこそ届けたいサービス。

ほかにもあっちこっちに話は広がり…
当事者を含め、視覚障害に関わる人たちにとって、共有したいこと、解決したいことは尽きません。

談論風発に価値あり

次回以降もう少しテーマを絞って、いろんな方に参加していただきながら、この意見交換会を継続していければ、それぞれの思考や行動に良い変化が表れ、やがて周囲にも波及していくのではないでしょうか。さすがにそこまでの影響力はないですかね。でもひとりで本を読んだり熟考することも大切ですが、誰かと意見を交わすことでしか得られないものがあるのも事実です。

有名な書籍、アドラー心理学の「嫌われる勇気」の中にこんな一節があります。「ソクラテスは若者たちと路上で議論を重ねその哲学をプラトンが著作として残しました。またアドラーもカフェで人々と対話したり、小さなディスカッショングループで議論することを好んだ人物でした」。いつの時代のどんな環境であっても、新たな発想が生まれるのはやはり対話の中からであると実感した集まりでした。