体験取材

視覚障害者が語る夢発表会レポート ~見えなくても見えにくくても、私たちには夢がある!~

視覚障害者webメディアのミルクフ編集部です。

2020年6月14日、7人のハイパー視覚障害者に集まっていただきました。なにがハイパーかと申しますと「熱く夢を語れる」という点でとても凄い人たちなんです。おこなったことはzoomを使ったオンラインでのスピーチ大会。その名も「あなたの夢をあきらめないで presented by ミルクフ」です。

夢を語る人、その名も夢かたりすと

参加してくれたのは20歳から60歳までの男女7人。この7人には視覚障害のほかに共通点がもうひとつ。夢を持っていること。だから彼らを「夢かたりすと」と呼ぶことにしました。提案してくれたのも参加者の方です。

開催するにあたって気をつけたことは、他人の夢と比べない、他人の夢を批判しない、でした。夢の大きさは関係ありません。終わったあとにそれぞれがより一層夢に近づきたい、と思えたかどうか。それが大事です。

それぞれの挑戦

では夢かたりすとの皆さんの発表内容をご紹介してまいりましょう。スピーチはひとり8分間。ぎゅっと圧縮しているので雰囲気だけでも感じとってください。

ナリサワヒロアキさん「おせっかい社会の実現へ」

私はアルティメット(最高の)ジュージュー(焼肉)を食べたい!一流のシェフが調理したA5ランクの食材という意味ではありません。自ら美味しいと感じられる状況を作りたいのです。そのために実現したいのが障害者の小さな冒険を応援するおせっかい社会。障害者が勇気を出して踏み出した1歩を称えて支援してくれる社会です。偏見や差別でその小さな1歩を閉ざされないように。私たちを知ってもらう発信をしていきます。そうしたより良い社会になったとき普通の肉が格別な美味しさに感じられるはずです。

フジハラナツコさん「もう一度対人援助の仕事を」

私は以前看護師として働いていました。小児看護の仕事は天職であり病気の子どもたちやご家族と共に人生を歩み、支えていくことは生涯の夢だと信じていました。ところが自分自身が病気で視覚障害者に。何もできない助けられるだけの人生だと悲観しました。そんな私に手を差し伸べてくれたのが福祉の支援者や仲間たち。少しづつ自信を取り戻せるようになり、もう一度誰かの人生を一緒に喜び悲しみ苦しみ楽しみ、人の役に立てる仕事をしたいと思うようになりました。その夢に向かって今また大学で勉強しています。

フルカワヤスヒロさん「健常者と同じ生活の環境づくり」

病気で全盲になった直後は嫌なこと辛いことばかりでした。そんなある日、ふと見えてた頃と同じ生活をしてみたいと思ったのです。スポーツ、釣り、キャンプ、音楽。でもそのための環境がない。だったら自分で作ろうと、みんなで遊べるサークルを立ち上げました。それから食べ歩きや飲み歩き。誰かに連れて行ってもらうだけでなく自分で好きなお店を選びたい。そんな思いから視覚障害者が入りやすいお店の情報を多くの人と共有できたらと、アプリの活用を試していこうとしています。

ヤマダナミコさん「書くことで世界を変えたい」

文章を書くことが昔から好きでブログを書いてます。内容はリアルな日常のこと。視覚障害者というと「すごく頑張ってる」「すごく困ってる」と極端なイメージを持たれがちですが、もっと普通ですよ、と身近に感じてもらいたいのです。このブログのおかげで、いい出会いもたくさんありました。今後さらに活動の幅を広げていって、必要な人に必要な情報を届ける、晴眼者との間の壁をなくす、純粋に多くの人に楽しんでもらう。そんなことを目指していきたいです。

ツキミアツシさん「3つの夢に挑戦」

現在福祉系の大学で学ぶ私には3つの夢があります。1つ目は社会福祉士になること。網膜剥離で見えなくなっていく中でいろんな人にお世話になりました。今度は自分が相談業務の職に就いて恩返しをします。2つ目は政治家になること。政治は遠い世界と考える人も多いけれど、自分たちの生活に密接に関わっています。いつか国会に行き、視覚障害者の立場から住みやすい世の中を作れたらと考えています。3つ目は日本国民みんなで正しい歴史の勉強をすること。自分たちの国に誇りを持てるよう活動していきます。

ユダアヤノさん「視覚障害者が運営するカフェ」

先天性弱視の私は小さい頃に持っていた夢を次第に諦めていき社会人になりました。そんなとき出会ったのが日本視覚障がい者美容協会の佐藤優子さん。買い物に不便を感じていた私は佐藤さんが主催するファッション雑誌を実体験できるイベントに参加。そこで佐藤さんから「視覚障害者が運営するカフェを一緒に作らない?」と声をかけられました。私の夢が決まったのです。可愛いエプロンをして美味しいスイーツを出せるようなカフェを作れるよう夢に向かって歩んでいきたいと思います。

オオヒラヒロアキさん「シンディにシャッターを切る!」

僕は全盲だけど写真を撮るのが大好き。それに置いてけぼりのないみんなが参加しやすいイベントの企画もしている。こんな僕の夢は同じ誕生日のアメリカのシンガー・シンディローパーにシャッターを切ること。来年世界一周の旅に出るそのとき、ニューヨークの公園で「シンディに会いたい」と叫ぶ。出会えたら最高の瞬間を写真でプレゼント。もしお礼をしてもらえるなら日本で僕のイベントに出てもらって僕らの工夫を世界に広めたい。そしてこの夢はひとりで叶えるんじゃなくそれぞれの夢と重なるみんなと叶えたい!

晴さんの歌とともに晴れやかに

全員のスピーチが終わった後、おひとりづつ感想をいただきました。夢を口に出して言ったことでより向き合えた、みんなの発表を聞いて刺激を受けて楽しめた、参加できてよかったとありがたいお言葉ばかり。

運営上のミスは多々ありましたが、夢かたりすとの皆さんに助けられました。そしてもうひとりこのイベントを華やかに飾ってくれた方がいます。それは湖霧晴(コキリハレ)さん。カフェなどでライブ活動をされているシンガーです。今回のために岡村孝子さんの「夢をあきらめないで」を歌ってくださいました。感謝です。

あっという間の2時間。皆さんが最後とても晴れやかな声になっていたのが何よりも嬉しいことでした。