編集部的雑感

はじめてのVoiceOver(ボイスオーバー)体験と視覚障害者のICT利用

視覚障害者webメディアのミルクフ編集部です。

先日、神戸アイライト協会で行われたiPad体験コースに参加してきました。2回にわたってVoiceOver(ボイスオーバー)の基本的なジェスチャを習ったり、視覚障害者にとって便利なアプリを実際に使ってみたりと大変楽しい時間となりました。

ちなみにその時に講師をしてくださったのは日本ライトハウス情報文化センターの前北純弥先生です。

神戸アイライト協会さんも日本ライトハウスさんも、視覚障害者やロービジョンの方の困りごとに対する提案やサポートをしてくれる支援組織です。
詳しくはそれぞれのホームページをご覧ください。

特定非営利活動法人 神戸アイライト協会
社会福祉法人 日本ライトハウス情報文化センター

意外と多い⁉ ボイスオーバーを使えない視覚障害者

ボイスオーバーとはiPhoneやiPadに標準で備わっている音声読み上げ機能。画面上の文字や実行した動作を音声で教えてくれます。もちろんAndroidやWindowsパソコンにもそれぞれに対応した読み上げソフトがあります。視覚による読み書きが困難な人にとっては今やなくてはならないものですが、視覚障害者ならみんな使えるのか?というと、そんなことはありません。

特にスマートフォンやタブレットといったいわゆるスマートデバイスは、音声読み上げ機能をオンにした場合、操作方法が通常とはまったくことなります。なので、直感的に触るのはかなり難しい…
現に筆者も今回の体験コースで初めてボイスオーバーを使いましたが、ひとつひとつ教えてもらわなければ目的のアプリを開くことさえできませんでした。ふだんからiPhoneもiPadも使っていますが、ロービジョン(全然見えないのではなく見えにくい状態)なので、文字情報は今も視覚を頼りに読んでいます。おそらく多少なりとも視力が残っているロービジョンの人は、あまり音声読み上げソフトを使ってないのではないでしょうか。
では自分の目で読めない状態の人はどうでしょう。驚くほどすごい使い手の人たちがいる一方で、まったく使えない人もかなりいます。

多くの人にとってあたりまえとなっているスマートデバイス。日常的に使用している人に今さらその便利さを説くまでもないですが、視覚障害者の中にはそれらをまったく未知のモノと感じている人も少なくありません。
特に高齢の視覚障害者の中には、いったいなにができるものなのか、音声読み上げ機能ってなにをどう読んでくれるのか、わからないからハードルが高いと思い込んでいる人もまだまだいるのです。

そのあたりのことをiPad体験コースで講師をしていただいた前北さんにお聞きしてみました。

スマートフォン、できることならトライしてみよう

大前提として、日本ライトハウスでは、すべての視覚障害者がパソコンやスマートデバイスを使えるようにとお勧めしているわけではありません。相談に来られた方の困りごとや、やりたいことをしっかり把握して、その方にとって負担が少なく、より適切と思われる解決方法を提案していくという考えです。情報機器を使わなくても、ほかの道具や当事者が今すでに持っているものをうまく活用してできることもたくさんあると言います。

ですが当事者が本人の意思とは別に、必要にせまられて相談に来られることも珍しくないようです。「ガラケーはなくなるんですよね?」「スマホに換えないといけないって聞いたんですが?」「人に勧められてiPhoneにしてみたけど使い方がわからない」など。

実はこれはチャンスでもあります。

はじめは指の使い方がうまくできずに苦労されたり、やっぱり難しくて覚えるのが大変、と自信なさげでも、繰り返し操作するうちにみなさんだんだん使えるようになっていくのだそうです。そして何も知らなかった人がスマートデバイスを使えるようになったとき、おおむね満足度は高いとのこと。

最初からあれもこれもといろんなことをやれる必要はなく、音楽を聴きたい、本を読みたい、目の前の情報を知りたい(OCRや物体認識アプリで)といった当事者の一番やりたいことができれば十分です。ひとつやりたいことが叶えられると自信や喜びが生まれます。そこから次の目標へと興味が移っていき、自分に合った使い方を発見できるのではないでしょうか。
このように、その人なりの活用方法を見つけていただくためのお手伝いこそ、ご自身の役割であると前北さんは考えられています。

高齢の視覚障害者がご家族やお知り合いにいる方。値段も安くはないので無理におすすめはしませんが、できることなら触れてみる機会を与えていただきたいと思います。本人に新しいことを覚える気がないし自分でも無理だと言っているから、と決めつけることだけはやめてください。
最初は抵抗感があってもsiriでメモをとることから始めれば入っていきやすくなります。同じようにsiriでカレンダーの登録や、アラーム設定をしていけば、自分にも使えるかもという期待が膨らんできます。

身近に情報機器とまったく無縁の視覚障害者がいる方は、ご本人とお話合いの上で、各地域の支援組織や福祉協会もしくは当事者団体に、使い方を教えてくれるところがないかご相談してみてください。