テクノロジー

視覚障害者の一人歩きを応援!福祉工学から生まれた触る地図作成システム

昔にくらべて手軽に地図を利用できる時代になりました。パソコンやスマホで人々は簡単に行きたいところまでの経路を知ることができます。

でもそれは目で地図を見ることができる人たちの話。視覚障害者には関係ない、と思ってますよね?そんなことはありません。ICTの活用で触る地図を簡単に手に入れられる時代がそこまで来ています。そもそも触る地図ってなに?という人も、1枚の地図作成に長い時間と専門知識が必要だから実用的じゃないと思っている人も、心配ご無用。

新潟の地に、触る地図の作成に新風を巻き起こす研究者がいるのです。

工学は役に立ってなんぼ!使われてこその研究だ

その研究者はモノづくりが好きな青年でした。そしてそこから電気工学を学び、生体工学を専攻し、福祉工学の道へと進みました。そして福祉工学分野で、視覚障害者のICTに特化した研究を長年続けています。
名前は渡辺哲也、新潟大学工学部福祉人間工学科、准教授です。福祉工学とは何か?との問いに、渡辺先生は学問的な回答ではなく、技術を使ってできないことをできるようにすると教えてくれました。これこそが渡辺先生の一貫したスピリット。華やかで見た目にカッコいい最先端技術の研究も素晴らしいが、自分は人に使ってもらえるものを研究をしたい、と胸を張ります。
渡辺研究室ロゴ

そんな渡辺先生のこれまでの代表的な研究成果がこちら。恩恵を受けている人も多いのではないでしょうか。

  • 日本初Windows版スクリーンリーダーを開発
    全国で職場のパソコンがMS-DOSからWindowsに切り替わる際、視覚障害者からの声に応え96年に初めてWindowsの日本語対応版スクリーンリーダーを作られました。

  • 漢字変換に必要な詳細読みのシステムを開発
    iPhoneで使用されている漢字の詳細読み(例えば「読」という漢字であれば「よむ、どくしょのどく」となる)データを作成しAppleに提供されました。

そして渡辺先生がこの約10年間、一番力を入れているのが「触地図」です。

行きたい場所の触地図を持って街へ出よう

ではあらためて、触地図とは何か。また視覚障害者にどう役立つのでしょうか。
漢字からもお分かりのとおり、触地図というのは視覚障害者が手で触って理解するための地図です。

渡辺先生が開発した触地図自動作成システムでは、人が集まる大きな駅や有名施設の周辺だけでなく、個人の自宅近辺や行きたい地域の地図も作成することが可能です。道路や河川、鉄道といった線で描かれる部分が熱で膨らまされ、なぞっていくことで全体像が理解できます。また目印になる建物やそれらを説明する点字も配置されているので目的地までの経路もイメージしやすくなります。

実際に利用された方の声も、
・俯瞰して確認できるので助かる
・これまで知らなかった街の姿をイメージしやすくなった
・地図に触れることで、いつかはここに行ってみたい、というきっかけになる
・目安になるものがどのあたりにあるのかおおよその見当がつけられるようになった
・東西南北と90度の角度でしか捉えてなかったのが道のカーブの状態を知ることができた
と、触ってみた人だからこその実感がこもっていると言えます。

一方で視覚障害者の一人歩きをサポートする技術の進歩は目覚ましいものがあります。AIを活用した音声ナビゲーションシステムなどがあれば触地図は不要では?と思われるかもしれません。が、それは違います。歩行サポート用のAIナビシステムなどと触地図を一緒に利用することで、より一層理解の度合いが深まります。

それに晴眼者にも触地図は便利です。道に迷った視覚障害者が触地図を持っていると、尋ねられた人も触地図で道案内できるので説明が楽!晴眼者が口頭で視覚障害者に道案内するのは思いのほか困難なのです。

触地図をあたりまえにするために触図訳を広めたい

触地図の魅力わかっていただけましたか?行きたいところの触地図が欲しくなりますよね?
渡辺先生は、触地図自動作成システムを誰でも使えるようにと、ご自身の研究室のサイト上にオープンにされています。

そう、本来は誰でも作成できるのです。ただ、視覚障害者が理解しやすい、より良い触地図を作成するには多少ノウハウや訓練が必要になります。それに出力用の機械も。
ということで、現在は渡辺先生にメールで依頼をすれば無償で作成し提供してくださいます。

受け付けてから納品までの日数は、授業の予定、論文作成や学会準備、その他の研究課題などの状況によって異なります。

今は渡辺先生自ら触地図作成をされているものの、理想はこのサービスがあたりまえのものになり、より多くの人が利用しやすくなること。そのためには触図訳をしてくださる方が必要です。テキストを点字や音声にする点訳や音訳が、多くの方の協力の末に成り立っているサービスであるのと同様に、触図訳もご理解ある方の協力がなくては広がりません。

この理念に共感していただけた方は、2019年11月1日(金)~3日(日)に開催されるサイトワールドの触地図作成ワークショップをぜひ体験してみてください。参加希望の方、当日参加できないが興味はあるという方、渡辺先生までメールでご連絡をお願いします。渡辺先生のメールアドレスは、新潟大学 工学部 福祉人間工学科 渡辺研究室のサイトでご確認ください。

※)渡辺先生のメールアドレスが見つけられないという方は、当サイトのContactページからお問合せいただければ対応致します。