取材記事

誰もが当たり前に旅行を楽しむために、COTRAVELは情報でバリアをなくしていく

COTRAVEL_紹介用バナー(キャッチコピー)

悪気があるのかないのか。ときどき「視覚障害者の人って旅行して楽しいんですか?」という質問を耳にします。結論は『人それぞれ』なんでしょうけど。世の中には旅行好きの視覚障害者はたくさんいると思います。また、心の中では行きたいなぁと思っていても行くことができずにいる人も多いかもしれません。

もし同じ障害の人が体験した旅行記からヒントや勇気をもらえたら。もっと安全で楽しい旅行ができるのではないでしょうか。誰かの貴重な旅の思い出がほかの誰かの「行ってみたい」に繋がる。そんな役割を担うCOTRAVEL(コトラベル)。身体的・社会的バリアに悩む人のための旅行記投稿サイトです。

新入社員の提案から始まったサービス

今回ご協力いただいたのは、COTRAVELを運営されているリンク情報システム株式会社の大伍克則さんと上信(うえのぶ)優香里さん。まずは一番気になった、IT企業がなぜ障害者の旅行記投稿サイトを運営しているのか、についてお聞きしました。

始まりは4年前。上信さんの新人時代に遡ります。新入社員研修で会社から出された課題が「身近にあるIT社会の不便さを発見して解決策を提案する」でした。最初上信さんは全国各地の観光施設や宿泊施設のバリアフリー情報がまとまったサイトがあれば、と提案。しかし調査を重ねるにつれ、施設の情報だけではイメージしづらいと思うようになります。

実は上信さん、大学で手話を勉強していました。あるとき聴覚障害の友人とテーマパークに行く計画を立て、そこの公式HPを見たのですが、なんだか事務的で無機質な印象だったのです。その経験から、現地で受けられるサービスの情報を、利用する人の視点で集めたサイトという内容に変更しました。それが今のCOTRAVELです。

あなたの情報を必要としています

今年の6月1日にリリースされたCOTRAVEL、サイトを成長させていくには多くの方々の投稿が不可欠です。

上信さんはCOTRAVELの運営チームに入ってからバリアフリー、ユニバーサルデザイン、ユニバーサルツーリズムといったセミナーや研修に積極的に参加しています。そこで知ったのは旅行を楽しんでいる障害者がたくさんいるということ。その人たちの体験はすごく大切な情報です。個人のブログなどで発信されているかたもいますが、その情報を欲しいと思ってる人に届きにくいのが残念なところ。

アクティブな人からすると、旅行なんてハードルの高いものじゃないでしょ、と思われてるかもしれません。でも行きたくても情報が不十分なためにあと一歩を踏み出せない人もいるのです。

COTRAVELは誰でも投稿しやすい簡単操作。もちろん音声読み上げにも対応しています。それにSNSのようないいねやコメント機能があるので、投稿記事への反応がもらえます。運営チームはみなさんからの投稿をお待ちしています。

なおコンセプトは「当事者視点による施設や観光地のバリアフリー情報がたくさん盛り込まれた旅行記」ですが、まずは利用者のかたが書きたいと思ったことを書いてください。

注目の旅行記などが載っているCOTRAVELのトップページ

障害者を理解する第一歩は考えること

いわゆる健常者と呼ばれる人が障害者向けの商品やサービスを作るとき、どこまで当事者の立場になって考えをめぐらすか、これはとても重要だと思います。

COTRAVELの開発メンバーはまさにそれを実践しました。いろんな障害者を想定して、こういう場面ではどういう風に感じるか、を常に意識して考えたと言います。それでも本当にこれは不便なのか、どれぐらい不便なのか、どうすれば改善できるのか。悩み、考え、健常者の自己満足になっているのではないか、と自問自答しつつ作り上げました。

もちろん当事者へのヒアリングも実施しています。けれど当事者の意見を集めてその通り作ればよい、というのではなく自分たちで考えたことの意味は大きいでしょう。

また、取材に先立ってお渡しした「外出を不安に思う視覚障害者に旅行を楽しんでもらうには?」の質問にも、上信さんは真剣に悩んで考えてくれたそうです。そして答えは「視覚障害者のかたにもいろいろな背景があると思う。それをひとまとめにして『旅行いこうよ』と軽々しくは言えない。そういった中でも声をかけるとするなら、COTRAVELが頑張るから期待しててほしい。情報が足りなくて諦めてるのだとしたらCOTRAVELが先陣切って情報を集め、皆様に頼りにされるような場に発展させていく。」と、思いがこもった決意表明で返してくれました。

目の前の課題と将来の目標

このようなサイトの運用は同社としても初めての試み。利用者から喜びの声が届く一方、運営チームは課題の対応や将来に向けての取り組みに余念がありません。

たとえば機能改修。旅行記に動画も掲載できるようにしてほしいという要望があがっています。車椅子のかたが気になるスロープの角度や砂利道での力の入れ加減などは、写真や言葉よりも動画の方がわかりやすいのだとか。視覚障害者にとっても観光地の様子が音でわかると想像を掻き立てられるかもしれませんね。また障害別の検索機能についても、障害の程度に応じた、より細かな検索を求められているそうです。実現したらさらに便利になるでしょう。

そしてその先には。COTRAVELで旅行に関する情報がすべて取得できるようにしたいという目標があります。宿泊施設や乗り物の予約、ぜんぶ一貫してできればCOTRAVELだけで旅行が完結する未来がくるかもしれません。

そうは言ってもコロナ禍の今。旅行も難しいのが現状です。ただコロナの後押しですごいブレイクスルーが発生するかも、とは大伍さんの見解。これまで身体を動かせない重度障害のかたはVR体験やロボットが代わりに観光地へ行くぐらいでした。それがガラリと変わる可能性もあり得るのです。COTRAVELとしてはそうしたときにいろんな人が幸福になれるよう柔軟にサポートをしたい考えです。言うなれば、究極のみんなが楽しめる旅行サイト。

これからもCOTRAVELの動きに目が離せません。

COTRAVELのURL
https://www.cotravel.jp/