連載

RPべるぎーの胸の内:気付かない病気、理解されない障害。思春期の壮絶な体験(1)

はじめまして。べるぎーと申します。
私は「網膜色素変性症」という目の難病を患っている、視覚障害者です。

今回は、私が経験した「障害への理解」について書かせていただきます。

中学へ入学

私は地元でも有名な、ある部活動に入部するため、某中学校へ進学することを決めました。
その部活動とは、吹奏楽部です。
吹奏楽部へ入部したいと考えた理由は、『スウィングガールズ』という映画を観て、サックスという楽器に憧れたということと、もう一つ。
小学生のときに憧れていた先輩(以下、A先輩)が、その中学校の吹奏楽部に所属し、なおかつサックスパートに所属していたからです。

中学校に入学後、私は迷わず吹奏楽部へ入部届を出しました。
当時、私たち1年生の入部人数が多かったこと、顧問や先輩たちが適性を考えて担当楽器の配置を決定すること、などから、担当したい楽器を希望したとしても、その希望がスムーズに通るわけではありませんでした。
しかし、「絶対にサックスパートに所属したい」と思っていた私は、毎日行われる楽器体験でサックスパートに通い、先輩たちにアピールしました。その結果、希望通りA先輩と一緒の楽器、つまりサックスパートに所属することになりました。

事件発生

吹奏楽部に入部して、希望する楽器を担当できて、私はとてもラッキーでした。
しかし、それが悪夢の始まりだったのです。

入部したころから、私は机の上に置いてある楽器に軽くぶつかってしまったり、床に置いてあった楽器を軽く蹴ってしまったり、狭い音楽室の中を移動する際に他人の譜面台(楽譜を置くための道具)にぶつかり倒してしまったりしていました。もちろん、わざとではありません。
最初のころは少し楽器に当たるくらいだったのですが、次第に楽器を踏んだり蹴ったりしてしまったり、イスにぶつかり、イスの上に置いてあった楽器を床へ落としてしまったりして、ついには楽器が傷ついたり壊れたりする事態にまで発展していきました。これももちろん、わざとではありません。

先輩たちの反応は最初は「楽器の近くを通るときは気をつけてね」などの軽い注意でしたが、次第に「またやったの?」「ふざけているの?」などという、怒りへ変わっていきました。

私が見えていなかったことを説明し謝罪しても、先輩たちや顧問は「わざと楽器を蹴ったり踏んだりして壊している」、「A先輩にいびられているから先輩を困らせるためにわざとやっている」などと本気で思っていたようで、何度わざとじゃないことを伝えても聞く耳を持ってもらえず、私を怒り続けました。
「楽器の修理代を弁償しろ」と言われたり、「このまま、そんな態度を続ける(何度も注意しているのに楽器にぶつかることをやめない)なら部活を辞めてもらうことになるよ」と言われたり。ついには「頭がおかしいんじゃないの?」とまで言われ、部内全体に「頭がおかしい子」として浸透していきました。

他にも、楽器を保管していた暗い音楽準備室の中で人にぶつかったり、楽器の入ったケースを蹴って倒してしまったりすることもありました。
また、私の所属していた吹奏楽部は「マーチング」も有名で、夏の大会前にはとてもハードな練習がありました。マーチングでは「一糸乱れぬ隊列」が求められるため、視野が狭い私は「前を向いたまま横の人と列を合わせる」ということができず、周りの人から怒られてばかりでした。結局、選抜メンバーからは外されました。
先輩たちからすれば、楽器のこともマーチングのことも「何度言っても言うことを聞かない子」だと思われていたと思います。実際に悪口も言われていました。

今思えば、明らかに「視野狭窄」という症状ですし、その影響で楽器が見えておらず起きた事故だったと説明できるのですが、当時は「目の病気かも」なんて疑っておらず(脳とか心の病気かもと思ったことはありました)、自分の視野が狭いことも知らず、怒られるたびに、ただひたすら弁解と謝罪をするしかありませんでした。

もともと受けていたA先輩からの嫌がらせも止まらないどころか、上記の事件で余計にヒートアップしていき、耐えきれなくなった私は、2か月間休部することになりました。
やってもない、身に覚えのないことを「お前がやった」とされるのは、とても辛かったです。いわゆる冤罪ってやつですが、仲良くしてた人に信じてもらえないのは特に心にきます。

(つづく)

ライター:べるぎー