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RPべるぎーの胸の内:視覚障害者の進路って…?

健常者のみなさんは、高校卒業後にどんな進路を選ぶのでしょうか?
きっと、四年制大学・短期大学・専門学校への進学、あるいは就職を選ぶ方が多いと思います。

では、視覚障害者はどうでしょうか?
将来の仕事のことを考えて、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師(以下、まとめて「あはき師」)の国家資格免許を取得するために、その勉強ができる盲学校や養成施設へ行く方も、少なくないのではないでしょうか。

現在では障害者雇用が普及してきたため、そのような免許がなくても一般企業に就職することは難しくないと思います。しかし、「視覚障害者は盲学校に行って『あはき師』の免許を取って、その免許を活かして仕事をする」というイメージを持っている方が、今の時代にもいらっしゃると思います。

そこで今回は「視覚障害者の進路」について思うことを、私の経験を交えて書かせていただきます。

迷った末、私が選んだ進路

結果から申しますと、私は高校卒業後、四年制大学へ進学しました。
あはき師の免許取得ではなく、四年制大学への進学を選んだ理由は「将来やりたいこと」があったからです。

もともと理科が好きだった私は、中学生のころから「理系の仕事に就きたいな」と、なんとなく考えていました。そんな考えから、とりあえず理系の勉強に力を入れている高校に進学はしたものの、まだ考えはぼんやりとしたままでした。しかし、私のその考えが、「こんな仕事をしたい」という明確な目標に変わったのは、あるテレビ番組がきっかけでした。

その番組は、「全盲の方の額(ひたい)にヘッドライトのような機械を装着し、脳に電気信号を送って障害物を見る」という内容のものでした。その番組を観て私は衝撃を受け、「障害を持つ人をサポートする機械を開発して人の役に立ちたい」「障害を持つ人の生活を少しでも支えたい」という思いを強く持つようになりました。

私が自分の病気を知ったのは、16歳のときでした。中学生のころから思い描いていた将来へ向かって、高校へ入学してから数か月後のことです。病気が発覚して視覚障害者になった私は、「理系に進みたい」と思っていた進路を考え直すことになりました。あはき師の免許を取るために養成施設へ行くべきか、あはき師の免許を取得しなくて良いのか家族で話し合いもしました。

しかし、私の熱意は冷めるどころか、加熱していきました。自分が障害者となったことで、「障害を持つ人をサポートする機械を開発して人の役に立ちたい」「障害を持つ人の生活を少しでも支えたい」という気持ちが、より強くなりました。

その結果、私は四年制大学への進学を選びました。

大学進学を選んで思うこと

当時はある意味で、自分が視覚障害者であるという認識が薄かったのかもしれません。それは、目が見えなくなる可能性をしっかりと考慮できていなかったり、ずっとやりたい仕事を続けられるという前提でいたりと、将来を少し甘く考えていたように思えるからです。その甘い考えが、「目が見えなくなったら、働けなくなったら免許を取得すれば良い」という考えにもつながっていたと思います。

今になってそう思うのは、就活や就業を通して「国家資格免許」「一生ものの資格(免許)・仕事」というものに、当時よりも魅力を感じているからかもしれません。

あはき師の免許を取得するためには3年、もしくは5年かかります。そして、勉強だけではなく、年に1度行われる国家試験に合格する必要もあります。「目が見えなくなってから」「働けなくなったら」と気長に考えていると、その期間の長さゆえに後悔する場合もあるかもしれません。「あはき師の免許を取得するなら、少しでも目が見えているうちがオススメだよ」と、あはき師の免許取得のために勉強されていた方にアドバイスをいただいたこともあります。

しかし、国家資格免許に魅力は感じていても、私は自分の選んだ進路について後悔はしていません。大学に進学したことで、得られた知識や経験できたことがたくさんあるからです。行きたい業界に就職できたことも、大学に進学して良かったと思えることの一つです。

最後に

私は「勉強を始めるのに年齢は関係ない」と思っています。もちろん、勉強を始めるのであれば若いほうが有利かもしれません。でも、あはき師はあくまでも人生の中での進路の一つだと私は思います。

それから、障害者である本人にやりたいことがあっても、周囲の人たち(家族や学校の先生など)の不安や心配が上回ってしまうこともあると思います。そんなとき、私から周囲の人たちにお願いしたいことがあります。それは「障害者の可能性をつぶさないこと」です。

心配になる気持ちはとても分かります。しかし、現実離れしたことは別として、障害者が「やりたい」と思えることには、なるべく挑戦させてほしいです。できても、できなくても、それは経験になります。

どうか、やる前から「できないこと」を増やさないでください。お願いします。

ライター:べるぎー